ユーザー・オブ・ザ・イヤー選出の前に、基調講演や各国産業界の現状などが発
表された。例えば、DUCTが実際に利用されているケースをパネルで紹介する。
開会宣言であいさつに立ったウエブスターモールディング社のGeoff Cox氏は昨
年と今年のDUCTユーザーグループ諮問委員会の議長。彼は「われわれのコン
ファレンスが伝統的習慣になっていることを共に考え、見せかけで終るのではな
く、本当の目的を皆さんと共に再確認したい。第1の目的は、実戦的技術につい
て相互の考え方を積極的に交換し合い(中略)、第2の目的は、ただ知識を得る
だけでなく、コンファレンスで修得した多くのことを実際の製品やサービスの発展
にどう結びつけるかだ。会議中だけでなく、食事やお茶、酒を酌み交わす中で、
言葉や習慣を越え、同じテーマであるDUCTについて語り、新しい世界を創造し
てほしい」と語った。
基調講演では最近の調査によるCAD/CAM事情と題しBarry Brooks氏(PAコ
ンサルティンググループ)は「すでにたくさんのCAD/CAMが存在し、日夜技術革
新が続けられている。しかし、改善される可能性は十分残っている。これは総合
的サポートにより、作業現場からフィードバックをCAD/CAM開発側に反映させ
ること。生産現場の観点からは、すでに使われなくなった機能と、つねに使われ
る機能を吟味し、ソフトウェア設計全体のバランスに反映させること。さらにCAD
/CAMの工学的データ管理とプロジェクト管理をどのように改善するかが今後の
使用効果をあげるために重要だ。特にユーザーが最大のギャップを感じているの
が工学データ管理である。複数の現行システムと将来導入予定のシステムとの
互換性、形状管理をし、その形状を必要とする形状に変換するには工学データ
管理が重要だ」と提案した。
また、コントロールデ−タ社のH.Peter氏とA.Back氏は、ドイツのDUCTユー
ザーをサポートしてきた会社だが、それによると、ドイツでは、小規模金型工場か
らフォルクスワーゲンやメルセデスベンツといった大会社までDUCTを導入、「ユ
ーザーの約半分が他社とのデータ共有化を実現し、設計から部品加工までのデ
ータを一括管理している」とドイツでの実情を述べ、IAキャム社のA.L.Heras氏
はスペインについて、金型メーカーのMares社とC・F・C社、ツールメーカーのCo
demo社を中心にDUCTのアプリケーションについて研究しており、カタリニヤ地方
では30社のモールド関係の仕事をしている」と述べた。
このあと、Delcam Internationl社のエド・ランボーン氏が、DUCT5・2の概要説
明が行われた。
それによると、同システムは今回のコンファレンスのために昨年から準備してき
た。1つの改善点についてさまざまな角度から検討しているだけで時間が過ぎて
しまったが、例年このコンファレンスでは、新しい機能・特徴・操作を修得する機会
であること。このため、多くのDelcam技術開発スタッフは、ユーザーとともに将来
開発される技術の重要性、優先順位などに関して議論検討し、これらを反映させ
るためにこのコンファレンスに参加していると述べ、今回は第1日目にバ−ジョン
アップにおける変更点の概略、その後はテモンストレーションを公開して将来の方
向性についてディスカッションをした。
この中で今回新しく紹介されたのは、DUCTmachinistは工作機械メーカーと金型
メーカーのためのDUCTモジュール。これは、DUCTmodelとDUCTnc、DUCTshade、
DUCTlges/vdaの2つの標準ポストプロセッサとDNCIを含んでいるもの。このスタ
ータパックは、DUCT5のすべての機能に匹敵し、グレードアップを可能とするもの。
グレードアップの対象は、SUNとSilicon GraphicsとHewlett Packaard9000/700ワ
ークステーションだという。この新しいシステムは1992年末までリリースができる。
このほか、DUCTの新しい機能が数項目紹介されたが、注目されたのはシェル(
鋳造型)についてのモデリング操作の高いポテンシャルを持つといわれる、新しい
サーフェイス機能が紹介された。
@複数のサーフェイスで球を転がしたようにフィレットをはる機能で、キャスティング・モデリングと鋳造部門で時間を短縮。
A鋳造やキャスティングでサーフェイスをオフセットする機能が強化された。
Bトリミング機能が強化された。
以下は省略するが、記念講演で・はケンブリッジ大学工学部教授・Colin Andrew
氏が「大学と産業間の協同作業」と題し、大学で研究することと、実際の会社経営
することでは観点が大きく異なると述ベ、大学の研究者はコストや時間に関係なく
自分の研究テーマに没頭するが、業界では、いかにコストを削減するか、あるいは
時間短縮をどうはかるかが大きな問題だとし「われわれケンブリッジ大学工学部で
は、この問題を解決するため、大学と会社をうまくリンクすることを1つの提案とする。
いわば、研究テーマと実社会が抱えている問題を相互に協議し、理解しあいながら
問題解決に取り組み、少なくとも1カ月くらいのスタンスでお互いの立場や問題を再
確認すること。このように、産・学協同作業によってさらにスムーズに技術革新が可
能となると考える」と所信を表明した。これによって、このユーザー・コンファレンスは
より重要な意味を持つものであり、相互関係を密接に築いていきたい と締めくくった
コンファレンス・ディナーは同大学カレッジのバンケットホールで開催。この席上で、
DUCTユーザー・オブ・ザ・イヤーのコンテストが開始され結果は前述のとおりである。
表彰状の授与はDelcamInternational PIC会長のTom Kinsey氏。 表彰式が終って
ディナーが始まるが、全員起立し、イギリス女王陛下に乾杯。イギリススタイルの上
品なディナーだったが、ここまでの形式的セレモニーはなにか堅苦しい雰囲気であっ
た。しかし、このあとはなごやかなムードの中で、会話が弾み、まさに世界各国の親
善交流となった。日本の石井鉄工所が92年度の優勝者ということで、出席者の石井
克彦氏は注目のマトとなり、ディナーのあとも、同カレッジ内のパブで祝杯を挙げたあ
と、同氏のルームには、英語、ドイツ語、スペイン語、ポルトガル語などの人たちが
集まり深夜まで歓談が続いた。 (金型ジャーナル1992/9より抜粋)
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