精密部品〜大型部品加工及び金型製作・2〜5軸NCプログラム製作・2〜5軸機械加工・同時5軸加工

「同時6軸制御加工」

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日本の金型業界の実態のほとんどがヨ一ロッパには伝わってはいないようだ。
1992年のDUCTユーザー・コンファレンスの会場となったイギリス・ケンブリッジ大
学内のロビンソン・カレッジには世界各国から集まったDUCTユーザーで2日間の
セレモニーが盛り上ったが、2日目のコンファレンス・ディナーでも参加者の日本
人は珍らしく、不自由な会話の中から友情を暖め合ったが、こうした金型業界レ
ベルでの国際交流を通じ、日本の金型業界の技術レベルなどほとんど知られて
いないのである。今回の“ユーザー・オブ・ザ・イヤー”(User of the Year 1992
 Awards)受賞式出席をメインに、私と受賞した石井鉄工所の専務取締役・石井
克彦氏の2人は、この機会に世界各国の金型のソフトウェアの開発者やエンジニ
アたちと多く接触を持った。陽気なハンガリーのエンジニアとは終始ブ口ークン・
イングリッシュで対話し、ディナーでは、飲み、食い、技術を話題にしたものだ。
 DUCTメンバーで、イギリスの金型工業協会(略称GTMA)の会長にも金型産業
をテーマにインタビューの機会が与えられたが、日・英金型貿易収支のアンバラ
ンスを指摘されたり、とかく日本の金型業界は、ヨーロッパから見れば、極東の
一小国程度の認識レベルに過ぎない感じ。私は、この同会長のほか、デルキャ
ム社(DelcamInternational)の営業ベースで活動している独自の金型工場の取
材も実現した。そこで、今回、金型ジャーナルの臨時特派員としてイギリス滞在
期間中に精力的に回わってみた。ヨーロッパに知られざる日本ということは、裏
返えせば日本の金型業界でもその存在は稀薄ということになる。CAD/CAM
システムは金型にとって最早世界的に必要な武器になっている。日本の石井鉄
工所がDUCTの加工ソフトではからずも賞を獲得したが、こうした機会に、金型づ
くりという共通の目的に挑戦している世界各国の関係者とのコミュニケーションを
はかることは、国際社会の一員である日本にとっても必要であると思う。このレポ
ートは、そうした意図に基づいて発表するものである。

始めに、石井鉄工所が受賞した“ユーザー・オブ・ザ・イヤー”なるものがどんな
背景で誕生したかを説明する。
 今回のDUCTユーザー・コンファレンス(TheUnited Kingdon ofGreat Britain and
NorthemIreland)は今年で8回目を迎えた。前述したように会場はケンブリッジ大
学の29のカレッジのうち、ロビンソン・カレッジが会場となった。DUCT(CAD・CAM
システム)の基本的ロジックは、1965年にケンブリッジ大学で発案され、以来、
D・B・Welboun氏(DUCTの父と称ばれている)をプロジェクトリーダーに、ケンブリ
ッジ大学の頭脳を結集して研究が続けられてきた。
 この研究成果が主要関連業界から高い評価を受け、デルタメタル社、メルセデス
ベンツ社、フォルクスワーゲン社の3社により資金援助が行われ、1978年には、そ
うした関連会社でも実際にソフトが使われ始めた。Delta Cam(デルタ・キャム)社
のデルタグループが一般にDUCTのソフトを販売したのは1983年。これをさらに優
れた機能開発へレベルアップをはかるため、1985年にユーザーグループのコンフ
ァレンスが企画された。これは、DUCTのユーザーの要望を広くソフト開発に反映
させるために企画され、会議が実現したものである。いわば、イギリス国内から広
く世界のDUCTの金型ユーザーの知能を集め、ユーザーの国際的視点に基づい
て活動を開始しようとはかったインターナショナル・コンファレンスの性格づけを明
確にしたものである。
 このコンファレンスには、選挙によって8人の諮問委員が選ばれるほか、開発当
初から研究に取り組んでいる指名諮問委員1名、これにDelcam社、ケンブリッジ
大学、世界各国のDUCTユーザーによって運営されている。Delcam社は1991年
にデルタグループより独立分離し、この年、イギリス女王より、“Official Queen’s
Award forExport Achievement”という輸出貢献企業に与えられる賞を獲得、さら
に、イギリスの専門誌CAD/CAMインターナショナル・マガジンがCAD/CAMユー
ザーを対象に調査した結果,同社はユーザー・ベストサポート賞をも受賞したとい
う、CAD/CAMシステムで急速に成長してきた。Delcam社は現在世界に632社
(学校も含む)のユーザーを持ち、うち53の大学(高校も含む)にも納め、その数
約3000セットの販売実績を持つといわれている。
 今年1992年のDUCTユーザーグループの年次総会における8人の諮問委員(う
ち副委員3名)のメンバー会社は、ウェブスターモールディング社、JWアラノード社
、シムデータ社、ギラロドニビットリオ社、JJハピーマンチェスタ一社、コントロール
・デ−タ社、ディフェンス・リサーチ・エージェンシーの代表者らのほかコンサルタン
ト、Delcam社(指名諮問委員)などで構成した。 ちなみに、DUCTユーザーの主
な国は、地元イギリスが173社(学校も含む)、ドイツ194、韓国44、アメリカ42、日
本41、イタリア37、台湾36、スペイン30、ポルトガル12など。ついで大学関係で導
入しているのはイギリスが最も多く、以下ドイツ、オーストラリア、韓国。日本は豊
橋の専門校に入っている(資料はDelcam社)。
 ところで、DUCTのユーザー・オブ・ザ・イヤーの制定は昨1991年からスタート。
その第1回同賞を受賞したのは、クラッチギャボックスのハウジングのフィレットに
おけるフォルクスワーゲン社。この賞の選定は、DUCTシステムを実際にどのよう
な効果的活用をしたか、ということで、毎年1回エントリーされたソフトウェアを採り
上げるもの。このため、発表者は、実際の改善点・改良点を的確に把握し、具体
的な応用例を詳細に分かりやすく提案しなければならない。しかも、内容的には
独創的な発想で考えられたもの、技術的に優れたもの、DUCT機能をフルに発揮
したもの、実際に業務に対処する状況を扱ったもの、などで、これらをコンファレン
ス会場で発表したあと9人の諮問委員によって審査され、トップ賞が選定される。
昨年の第1回受賞したフォルクスワーゲンについで、今年第2回は日本の石井鉄
工所が受賞したが、考えてみれば世界の有名企業の次に日本では知名度のな
い小規模の金型メーカー、石井鉄工所が受賞したことがなんとも不思議であるが、
同賞が日本にもまだ馴染みのないものだけに、同社の受賞は遠いイギリスにお
いて一躍日本の金型企業の名を印象づけたことに感銘深いものを感じた。
 このコンテストに、どこの国々が何点エントリーされたのかは発表されないが、
最終選考に残った2つの“作品”は諮問委員長から紹介された。その1つが、ポル
トガルのCINFU社で出席したJ・Carlos氏が会場に用意されたコンピュータを用い
て約20分間デモンストレーションを行った。もう1つの作品が日本の石井鉄工所で
ある。専務取締役・石井克彦氏はビデオを用いて金型の5軸加工をどのようなテ
クニカルを駆使したか、ガウジングチェックがなぜ必要なのかを的確に説明した。
イントロ部分でこれまでの経緯をエド・ランボーン氏が説明したが、ビデオで作品
を紹介したのは初めてだったという。金型の5軸加工など、イギリスでは普及して
おらず、おそらく世界各国の金型業界でも話題の外におかれているのであろうか。
当然ながら会場からは質問の矢が飛び交った。もともと5軸加工を理論で説明す
ることが困難なために、ビデオを用いたわけだから、5軸加工を理論で説明するの
は難しかったようだ。
 この2つの作品のデモンストレーションが終了し、諮問委員9人による審査投票
が非公開で行われた。この結果、日本の石井鉄工所が優勝、ポルトガルのCIN
FU社が準優勝となった。優勝、準優勝それぞれに賞状と記念品が授与された。
最終選考まで残った作品はいずれも厳しい蕃査をくぐり抜けてきたもの。並入る
世界各国のエントリー作品の中から、Japanの名をこのケンブリッジ大学で強く印
象づけたことは、これからのヨーロッパの眼が日本の金型技術にも注目されるだろう。

ユーザー・オブ・ザ・イヤー選出の前に、基調講演や各国産業界の現状などが発
表された。例えば、DUCTが実際に利用されているケースをパネルで紹介する。
開会宣言であいさつに立ったウエブスターモールディング社のGeoff Cox氏は昨
年と今年のDUCTユーザーグループ諮問委員会の議長。彼は「われわれのコン
ファレンスが伝統的習慣になっていることを共に考え、見せかけで終るのではな
く、本当の目的を皆さんと共に再確認したい。第1の目的は、実戦的技術につい
て相互の考え方を積極的に交換し合い(中略)、第2の目的は、ただ知識を得る
だけでなく、コンファレンスで修得した多くのことを実際の製品やサービスの発展
にどう結びつけるかだ。会議中だけでなく、食事やお茶、酒を酌み交わす中で、
言葉や習慣を越え、同じテーマであるDUCTについて語り、新しい世界を創造し
てほしい」と語った。
 基調講演では最近の調査によるCAD/CAM事情と題しBarry Brooks氏(PAコ
ンサルティンググループ)は「すでにたくさんのCAD/CAMが存在し、日夜技術革
新が続けられている。しかし、改善される可能性は十分残っている。これは総合
的サポートにより、作業現場からフィードバックをCAD/CAM開発側に反映させ
ること。生産現場の観点からは、すでに使われなくなった機能と、つねに使われ
る機能を吟味し、ソフトウェア設計全体のバランスに反映させること。さらにCAD
/CAMの工学的データ管理とプロジェクト管理をどのように改善するかが今後の
使用効果をあげるために重要だ。特にユーザーが最大のギャップを感じているの
が工学データ管理である。複数の現行システムと将来導入予定のシステムとの
互換性、形状管理をし、その形状を必要とする形状に変換するには工学データ
管理が重要だ」と提案した。
 また、コントロールデ−タ社のH.Peter氏とA.Back氏は、ドイツのDUCTユー
ザーをサポートしてきた会社だが、それによると、ドイツでは、小規模金型工場か
らフォルクスワーゲンやメルセデスベンツといった大会社までDUCTを導入、「ユ
ーザーの約半分が他社とのデータ共有化を実現し、設計から部品加工までのデ
ータを一括管理している」とドイツでの実情を述べ、IAキャム社のA.L.Heras氏
はスペインについて、金型メーカーのMares社とC・F・C社、ツールメーカーのCo
demo社を中心にDUCTのアプリケーションについて研究しており、カタリニヤ地方
では30社のモールド関係の仕事をしている」と述べた。
 このあと、Delcam Internationl社のエド・ランボーン氏が、DUCT5・2の概要説
明が行われた。
 それによると、同システムは今回のコンファレンスのために昨年から準備してき
た。1つの改善点についてさまざまな角度から検討しているだけで時間が過ぎて
しまったが、例年このコンファレンスでは、新しい機能・特徴・操作を修得する機会
であること。このため、多くのDelcam技術開発スタッフは、ユーザーとともに将来
開発される技術の重要性、優先順位などに関して議論検討し、これらを反映させ
るためにこのコンファレンスに参加していると述べ、今回は第1日目にバ−ジョン
アップにおける変更点の概略、その後はテモンストレーションを公開して将来の方
向性についてディスカッションをした。
 この中で今回新しく紹介されたのは、DUCTmachinistは工作機械メーカーと金型
メーカーのためのDUCTモジュール。これは、DUCTmodelとDUCTnc、DUCTshade、
DUCTlges/vdaの2つの標準ポストプロセッサとDNCIを含んでいるもの。このスタ
ータパックは、DUCT5のすべての機能に匹敵し、グレードアップを可能とするもの。
グレードアップの対象は、SUNとSilicon GraphicsとHewlett Packaard9000/700ワ
ークステーションだという。この新しいシステムは1992年末までリリースができる。
 このほか、DUCTの新しい機能が数項目紹介されたが、注目されたのはシェル(
鋳造型)についてのモデリング操作の高いポテンシャルを持つといわれる、新しい
サーフェイス機能が紹介された。


@複数のサーフェイスで球を転がしたようにフィレットをはる機能で、キャスティング・モデリングと鋳造部門で時間を短縮。
A鋳造やキャスティングでサーフェイスをオフセットする機能が強化された。
Bトリミング機能が強化された。


 以下は省略するが、記念講演で・はケンブリッジ大学工学部教授・Colin Andrew
氏が「大学と産業間の協同作業」と題し、大学で研究することと、実際の会社経営
することでは観点が大きく異なると述ベ、大学の研究者はコストや時間に関係なく
自分の研究テーマに没頭するが、業界では、いかにコストを削減するか、あるいは
時間短縮をどうはかるかが大きな問題だとし「われわれケンブリッジ大学工学部で
は、この問題を解決するため、大学と会社をうまくリンクすることを1つの提案とする。
いわば、研究テーマと実社会が抱えている問題を相互に協議し、理解しあいながら
問題解決に取り組み、少なくとも1カ月くらいのスタンスでお互いの立場や問題を再
確認すること。このように、産・学協同作業によってさらにスムーズに技術革新が可
能となると考える」と所信を表明した。これによって、このユーザー・コンファレンスは
より重要な意味を持つものであり、相互関係を密接に築いていきたい と締めくくった
 コンファレンス・ディナーは同大学カレッジのバンケットホールで開催。この席上で、
DUCTユーザー・オブ・ザ・イヤーのコンテストが開始され結果は前述のとおりである。
表彰状の授与はDelcamInternational PIC会長のTom Kinsey氏。 表彰式が終って
ディナーが始まるが、全員起立し、イギリス女王陛下に乾杯。イギリススタイルの上
品なディナーだったが、ここまでの形式的セレモニーはなにか堅苦しい雰囲気であっ
た。しかし、このあとはなごやかなムードの中で、会話が弾み、まさに世界各国の親
善交流となった。日本の石井鉄工所が92年度の優勝者ということで、出席者の石井
克彦氏は注目のマトとなり、ディナーのあとも、同カレッジ内のパブで祝杯を挙げたあ
と、同氏のルームには、英語、ドイツ語、スペイン語、ポルトガル語などの人たちが
集まり深夜まで歓談が続いた。    (金型ジャーナル1992/9より抜粋)

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